【成長の罠】どちらの銘柄に投資する?

ジェレミー・シーゲル教授の著書で「成長の罠」という言葉が使われています。

米国株投資をしている人にとっては、シーゲル教授の「株式投資の未来」は非常に参考になる書籍で、一度は目を通しておくことをお勧めします。

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成長の罠とは

株式投資では、今後に大きく成長するような企業へ投資をすることが、資産を増やすチャンスだと思われがちです。

しかし、実際はそのような成長が期待できる企業への投資は、投資家の期待が過剰になりやすく、結果的に低いリターンしかもたらしません。

いくら有望な企業が高成長を続けたとしても、株価には既にその成長性は織り込まれていることが多く、思いのほかリターンが得られなくなる…というのが成長の罠です。

成長の罠にはまった投資家は、確信をもたらし、経済成長をけん引する企業や業界に、過大な対価を支払う

引用元:ジェレミー・シーゲル「株式投資の未来」日経BP,P.3

投資家のリターンを左右するもの

本書でシーゲル氏は、投資家のリターンについてこのように述べています。

株式投資のリターンを左右するのは、企業の増益率ではなく、実際の増益率が投資家の期待を上回るかどうか、この一点にかかっている。

引用元:ジェレミー・シーゲル「株式投資の未来」日経BP,P.14

つまり、企業の増益率そのものが高くなくても、投資家が期待していた以上の増益率があれば、高いリターンが得られるということです。

会社は大きく成長を遂げたとしても、投資家の期待を下回っていればリターンはマイナスにすらなる可能性がある…ということですね。

投資の指南書には、これから成長に期待できる銘柄を発掘せよ!!と書かれていることが多いでしょうから、それを読んでいる投資初心者の方が聞くと驚くかも知れません。

成長の罠は、国単位でも同じことが確認されており、世界で最も高い成長率を達成した国が投資家にもたらしたリターンは、どの国よりも低かったそうです。

あなたなら、どちらの銘柄に投資をしますか?

あなたはタイムマシーンに乗って、1950年の米国に到着します。

そこで以下のどちらかの銘柄を購入します。

1.スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージー (現エクソンモービル)
2.IBM

スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージーは、石油を扱うエネルギー・セクター。一方のIBMは1950年以降、目覚ましい発展を遂げることになるハイテク・セクターです。

1948年に米国の家庭にあるテレビの台数は合計14万8,000台だったものが、50年には440万台、52年後の2000年には5,000万台にまで急速に普及したそう。

その後もハイテク・セクター分野はコンピューター革命を起こすまでになり、ニューエコノミーという言葉が使われるようにもなりました。対して、石油など古くから残る企業をオールドエコノミーと呼んでいます。

また、両社の成長を示す主な指標は以下のようになっています。

※期間は1950年~2003年

指標IBMSt.oil.of.NJ
1株当たり売上高12.19%8.04%
1株当たり配当9.19%7.11%
1株当たり利益10.94%7.47%
セクター成長率14.65%-14.22%

どの指標でも、IBMがスタンダード・オイル・オブ・ニュージャージーを上回っています。

また、ハイテク・セクターが市場に占める比率(時価総額)は、50年前の3%から18%近くにまで拡大したのとは対照的に、エネルギー・セクターは20%から5%を割り込みます。つまり、この時期、ハイテクセクターのIBMはイケイケの成長企業だったんですね。

さて、事前にこれらの情報が判明している状態で1950年に戻ったとして、あなたはどちらの銘柄に投資をしますか?

そこで1,000ドルを投資し、配当は全て再投資に回し、2003年まで保有します。

それぞれのリターン

では、自分はイケイケのIBMに投資をするんだ!!という方…

おめでとうございます。

IBMは年率13.83%もの成長を遂げ、あなたが投資した1,000ドルは、2003年には96万1,000ドルまで増えました。単純に1ドル100円で考えても、10万円が9,600万円になったのです。文句のつけようがないリターンですね。

一方で、地味なエネルギー・セクターのスタンダード・オイルに投資をした方…

おめでとうございます。

スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージーは、IBMを上回る年率14.42%のリターンを達成しています。なんだ、せいぜい0.6%程度の違いじゃないかと思われるかも知れません。

しかし、あなたが投資した1,000ドルは、2003年に126万ドルにまで増えるのです。IBMと年率0.6%しか変わらないのに、金額では約30万ドル(3,000万円)もの差があります。

どちらも大金には違いありませんが、それにしても30万ドルの差は大きいですよね。この差は、長期的に複利の力が働いたことで起こったものです。

リターンに差が出る理由とは?

企業の成長を示す指標では、ことごとくIBMがスタンダード・オイルのそれを上回りました。にもかかわらず、なぜ投資家のリターンはIBMが下回ったのか。

その理由が、株式投資の未来ではこう述べられています。

投資家がIBM株に支払った価格は、一言でいうと、高すぎた

IBMはスタンダード・オイルを成長力で圧倒しているけれど、スタンダード・オイルはIBMをバリュエーションで圧倒している。

そして投資家のリターンを決定するのは、バリュエーションだ。

引用元:ジェレミー・シーゲル「株式投資の未来」日経BP,P.9

バリュエーションとは、本来の企業価値に対して株価が割安か割高かを示すものです。株式投資では、PER(株価収益率)がバリュエーションの目安としてよく使われますね。

今回の場合、IBMは投資家の期待が高かったので、常に株価も高く推移しました。つまり、株価は決して割安ではなかったのです。

一方、スタンダード・オイルは投資家の期待は高くなかったため、株価も割高になることがありませんでした。配当利回りも、IBMが約2%程度だったのに比べ、スタンダード・オイルは約5%と倍以上の差がありました。

その結果、配当を受け取って再投資する際、スタンダード・オイルはより多くの株を買い増すことができましたが、IBMは配当は少なく株価は高かったので、あまり買い増すことができませんでした。

スタンダード・オイルの保有株数が50年後には当初の約15倍になったのに対し、IBMは約3倍程度にしかなっていません。株数が多くなれば受け取れる配当も増えるし、株価が上昇すればその恩恵も受けられます。

株価の上昇率だけで見ればIBMが11.41%、スタンダード・オイルが8.77%とIBMに軍配が上がりましたが、投資家のリターンを決定するのはそこではなかったんです。

より多くの配当を受け取り、より多くの株数を積み上げられたスタンダード・オイルのリターンが優ったという事実は、僕たちが投資を行う上で重要な意味を持ちます。

まとめ

IBMとスタンダード・オイル・オブ・ニュージャージーでは、IBMでも高いリターンをもたらしてくれています。

しかし、歴史を振り返ればイケイケの企業に投資をしても、大したリターンが得られませんでした。なぜなら、投資家の期待が過剰だったからです。

では、僕たちはどのような企業に投資をするべきなのか。

それは、このブログでも紹介しているような配当再投資をするに値する企業へ、コツコツと投資を続けることだと僕は考えています。

おしまい。

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